よろしくお願いいたします

会員の皆様、関係されている企業の皆様、本学会主催のIPM基礎講座に参加されていらっしゃる皆様には、日頃から本学会の活動に多大なご協力をいただいており、誠にありがとうございます。
さて、川上裕司会長の2期任期満了に伴いまして、2015年度から、私が会長に就任させていただくはこびとなりました。どうぞよろしくお願いいたします。

1977年に森八郎博士が、 シロアリの研究会として発足した都市有害生物管理学会(旧名称:日本家屋害虫学会)は、社会から求められている諸問題に対して、産学協同での研究と実践をする事が、今ますます必須になっています。

2014年の夏には、 デング熱患者が方々の都市で多発して、 これまではあまり知られていなかったヒトスジシマカが有名になりました。また外来種の毒性セアカゴケグモが、 都心の商店街で沢山発見され、 それらに咬まれて、 神経毒性により病院に運ばれたニュースも社会問題になりました。それからやはり外来種で、 非常に攻撃的なアルゼンチンアリが、 輸入貨物に付随して入り、 根絶が難しいため日本での分布も広がり、 他の昆虫や生物の生態系を荒らし、 最近では都市の一般住宅にも被害が起きています。また、 さらに小さな昆虫ばかりでなく、 観光客で賑わっている観光地に大きなクマやイノシシが出没して、 町全体が大騒ぎになり、 観光客が減少したという状況も起きています。この学会が対象とする有害生物の間口が、 このように広がっている中での会長就任は、 本当に重責を感じています。しかし、 この学会は、 長いキャリアを持ち、 優秀な能力を持ち合わせている会員皆様のパワーがあります。今こそ、 この学会が社会に役立つ時です。皆様からのご協力を得ながら、 良いチームヮークで頑張りたいと思っております。


森八郎博士とご一緒に

40年ほど前、私は森八郎博士に同行して、博物館内の害虫やカビの検査と、その燻蒸に携わっておりました。まず収蔵庫の床を帯ではいて、集めた塵やゴミを、東京国立文化財研究所内にある森先生の生物研究室に持ち帰り、白い紙の上にそれらを広げて、メッシュの大きさの異なった篩(ふるい)でふるって、仕分けをしました。そしてその中から昆虫の糞や脚や触覚などを選び出して、顕微鏡で観察して同定をするのです。その同定は、上野の図書館へ行って、大きな昆虫図鑑で検索するので、私は研究室と図書館との往復を繰り返していました。そしてその昆虫のパーツをガラスの試験管に入れ、昆虫名・学名・捕獲場所・日時・捕獲者名を記したラベルを貼るのです。こういったように掃除から始まり、昆虫の学名調べまでの一環の作業が、森八郎先生からの私への勉強の贈り物でありました。そして今でも私の大切な財産になっています。

当時、一般家庭の床下でのシロアリ駆除の際に、住民たちに頭痛が起きたり、呼吸障害が起きたりした症状が出た事から、森先生は、薬剤による悪影響はあってはならないと、頭を痛めておられました。その頃の森八郎研究室には、燻蒸作業に携わっている大手の企業の方々や、殺虫剤メーカの方々の来訪が多くありました。
そこで燻蒸業者と殺虫剤メーカと研究者とが一緒になって、シロアリ研究会を創設されたのでした。これが今のこの都市有害生物学会の始まりです。そして森先生と日本の燻蒸業者と殺虫剤メーカは、人々への健康をまず第一にと、住宅においての塩素系の強い殺虫剤の使用を禁止したのです。これは世界においても、また今日でも、多いに誇れる人々への安全性を重視した画期的な勇断でありました。そして研究者と企業が合同で、薬害のない殺虫剤の開発に努められたのです。


我が国が世界に誇りとする文化遺産の伝承

我が国は、害虫やカビの繁茂に適している気候にも関わらず、世界に類を見ないほど文化財としての木造建造物が保存されて、活用もされている国です。今、有害生物対策は、地球環境と人々への健康を考えて、IPMの理念が世界的に浸透しています。IPMとは、被害が起きる前の予防に重点を置く対策法です。これは日本人が、先人たちの知恵を引き継ぎながら、長い年月にわたって文化財を守り、今に伝えている同じ仕法なのです。この事を、私たちは、次世代に繋げて行かなければなりません。このような中、現状は、地球温暖化が進行しつつあり、急激な気象の変化や、大きな自然災害も世界の各地で多発しています。これからは、最近のIT技術も導入して気象の変化、そして生物の変化をも事前に予測しながら、森八郎先生が創設された時の、人々への安全性と多様生物とが共存する都市づくりの初心を継続していく事がこの学会の使命でもあると思います。

都市とは、人間だけが住んでいる場所ではなく、そこは多種多用な生物の住む場所でもあります。それをアーバンと言います。そしてその都市で、人間に対して悪さを引き起こす生物をペストと言います。都市有害生物管理学会、英語名はThe Society of Urban Pest Management,Japanは、なお一層のこと、都市における有害生物による被害防除について真剣に取り組み、且つ、普段はアーバンペスト学会と簡略して呼ぶ事にして、会員ではない方々にも親しまれながら、幅広いニーズに対応して、皆様の役に立つ学会を目指して行きたいと思っております。

今後とも皆様のご指導・ご協力の程を何卒よろしくお願い申し上げます。

2014年11月20日