皆様、猛暑お見舞い申し上げます。

関西豪雨の被害に遭われた方々、台風の被害に遭われた方々へ
お見舞い申し上げます。
今年は猛暑を越して酷暑と言われる中、熱したフライパンの上のような環境で生物たちが切磋琢磨している夏となっています。
一層の事、昆虫になって地下の穴蔵の中で生活をした方が快適だな~とも思えています。

さて8月2日、3日に、当学会の森正明副会長が代表世話人をされている「第56回 全国大学保健管理協会 関東甲信越地方部会研究集会」が慶應義塾大学三田キャンパス南校舎ホールで開催されました。

参加者は、大学で保健管理に従事されていらっしゃる方々で、歴史も長く今回の参加者数は約400名と大盛況でした。私も拝聴させていただきました。
森正明慶應義塾大学保健管理センター所長の開会のご挨拶に続いて長谷山彰慶應義塾長(当研究集会の部会長)のご挨拶がありました。
講演・シンポジュームのプログラムのテーマは、第1日には、スポーツ障害対策、教職員の健康管理、学内の感染症対策で各ご専門の先生方々の講演がありました。
第2日目は、シンポジューム「身近なリスクの回避教育」と、保健・看護分科会 シンポジューム「教職員への健康支持」が催されました。
当学会員の江下優樹・前年度編集委員長(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター、大分大学医学部、大阪大学微生物研究所、マヒドン大学熱帯医学部、ザンビア大学獣医学部)のご講演「有害昆虫対策(デング熱、ジカウィルス感染症等に備えて)」の講演も第1日目にありました。非常にタイムリーで重要な内容で会場の皆様が熱心に聴いていらっしゃいました。

また、同大キャンパス内のザ・カフェテリアにて《交流会》が催され、毛利文香さん(第8回ソウル国際音楽コンクールに日本人として初めて最年少で優勝など。
慶應応義塾大学卒業)のヴァイオリンの演奏とスピーチがあり、大勢の参加者が情報交換や新な進展に向かって和やかに会話されていらっしゃいました。

現在、大学は、教育と研究領域も非常に多様になっており、また学生、教員、更に携わっていらっしゃる方々の国籍も非常に多くなっている中、皆様の保健管理のお仕事の重要性を再認識いたし、またその裏での難しさや、最先端の研究と、地道な研究の持続と、近日の「働き方改革」の法律など、その兼ね合いに重要課題があることなど大変勉強になりました。

なお、今回、会場となった慶應義塾は今年で創立160周年です。

この大学の創立者の福沢諭吉先生は日本の近代化の中に、医学の進歩の重要性を称えられ、創立から10年目の慶應4年に、塾が芝新銭座に「慶應義塾」と称して教育の場の新校舎を創建された時から、現在の「保健管理センター」の前身である医務部が設けられて、そして塾内に病室があり、医薬品が置かれていて、塾生が医学分野の研究の傍ら塾生の健康管理も行っていたという「保健管理」についても150年の歴史がある慶應義塾のキャンパスを、今まで以上に誇りを感じながら、私は帰路につきました。

2018年8月3日

◆養老孟司先生の発案で建立された建長寺の「虫塚」

6月4日は「虫の日」。この日、私は、養老孟司先生の発案によって鎌倉の建長寺に建立された「虫塚」に詣でて参りました。
建長寺の一番奥にある建物「方丈」から更に奥へ、なだらかに続く丘の小道を登りながら見事に咲き誇った紫陽花を眺め、それから竹藪を通り抜けると、建築家の隈健吾先生の設計で2015年に建てられた「虫塚」がある広場に入ります。
この「虫塚」は、真ん中に養老先生のお好きなゾウムシのオブジェが置いてあり、それを囲んで金属製の棒が美しく組み合わされたデザインで出来ています。虫たちがせっせと動いている道の跡のようにも思えました。その周りに、種々の石で制作された虫の彫刻が飾られています。
その日は初夏のとても強い日差しでしたが、この虫塚のある広場は、木立からの爽風が心地よく、鶯の鳴き声も聞こえ、蝶々が戯れていました。そのような穏やかな佇まいの中、建長寺の吉田正道管長と多くのご住職による読経に続いて「虫塚」に参拝いたしました。

養老先生は、この場所に、これから虫の彫刻をもっと増やして行き、子供たちが集い、楽しめる「虫の彫刻公園」になさりたいという構想を私に話してくださいました。

◆森八郎先生と養老孟司先生の虫供養の御心が私の中で繋がりました。

40年ほど前になりますが、私は、東京国立文化財研究所の森八郎博士の生物研究室の助手をしていました。その時の私の仕事は、研究室内にある昆虫飼育室で、森八郎先生のご指導の元にワモンゴキブリ専用の高層マンションを造る事で、材料はティシュペパーの空き箱でした。それをガラスの水ナシの大きな水槽の中に高く積み上げるのです。このワモンゴキブリのマンションを掃除して、新しいマンションに入れ替え、それが終わると次は、美術館や文化財施設から送られて来る昆虫の死骸やパーツを標本にして、それぞれの昆虫の名前を小さなラベルに書いてガラスのビンに張り付けていました。
夕方、室内での作業が終わると森先生と、東京国立文化財研究所の裏庭へ行って、先生がお造りになった虫のお墓の前に二人でしゃがんで、実験の供試虫となった虫たちに感謝のお詣りをしていました。
森八郎先生からは、沢山の事をお習いいたしましたが、この小さな生き物へ感謝する気持ちを持つ事の大切さもその一つです。
40年前は森八郎先生から、そして今年は、養老孟司先生から、人間がより良く生きる為の研究と実験に、命を捧げてくれた小さな生物を供養するというお二人にみられる共通したお心に感銘を受け、これは、ぜひ伝えていかなければと思った次第でした。

今年の「虫の日」は、このように森八郎先生と養老孟司先生が 私の中で繋がったという大変嬉しい日になりました。

今、近来まれにみる早さで、世界の情勢が激変中です。また文明の進化の落とし穴ともなった地球の温暖化も深刻な状況です。個人の日常生活の中でも、情報が氾濫し過ぎているように思えます。様々な喧騒に埋もれること無く、この自然環境を大切に守っていく研究に、私は、地道に励んで行く自分でありたいと、今まで以上に思った「虫の日」でもあります。

鎌倉の地に凛として建っている文化遺産がパワーとなって、私の背中を押してくれているように感じながら帰路に付きました。

これから毎年この「虫塚」に供養させていただいて、風の音、鳥の声、足元には小さな虫の活動を体感し、アートとの対話も快感できる事が楽しみになっています。

2018年6月8日・記


  • ① 山門
    建長寺は建長5年(1253年)鎌倉幕府五代北条時頼によって創建された日本で一番古い禅寺。楼上に釈迦如来、五百羅などが安置してあり、その下を通ると心が清浄になると言われている。重要文化財

  • ② 樹暦750年のビャクシンの古木。

  • ③ 方丈と庭園
    方丈には座禅や研修をする広間がある。庭園は夢窓疎石の作。名勝史跡。

  • ④ 養老孟司先生と一緒に。

  • ⑤ 養老先生の司会と池田清彦先生の講演。





  • ⑩ 隈研吾先生の設計による虫塚。






  • ⑯ 養老先生を囲んで虫愛でる人たちのお仲間たちと一緒に。

よろしくお願いいたします

会員の皆様、関係されている企業の皆様、本学会主催のIPM基礎講座に参加されていらっしゃる皆様には、日頃から本学会の活動に多大なご協力をいただいており、誠にありがとうございます。
さて、川上裕司会長の2期任期満了に伴いまして、2015年度から、私が会長に就任させていただくはこびとなりました。どうぞよろしくお願いいたします。

1977年に森八郎博士が、 シロアリの研究会として発足した都市有害生物管理学会(旧名称:日本家屋害虫学会)は、社会から求められている諸問題に対して、産学協同での研究と実践をする事が、今ますます必須になっています。

2014年の夏には、 デング熱患者が方々の都市で多発して、 これまではあまり知られていなかったヒトスジシマカが有名になりました。また外来種の毒性セアカゴケグモが、 都心の商店街で沢山発見され、 それらに咬まれて、 神経毒性により病院に運ばれたニュースも社会問題になりました。それからやはり外来種で、 非常に攻撃的なアルゼンチンアリが、 輸入貨物に付随して入り、 根絶が難しいため日本での分布も広がり、 他の昆虫や生物の生態系を荒らし、 最近では都市の一般住宅にも被害が起きています。また、 さらに小さな昆虫ばかりでなく、 観光客で賑わっている観光地に大きなクマやイノシシが出没して、 町全体が大騒ぎになり、 観光客が減少したという状況も起きています。この学会が対象とする有害生物の間口が、 このように広がっている中での会長就任は、 本当に重責を感じています。しかし、 この学会は、 長いキャリアを持ち、 優秀な能力を持ち合わせている会員皆様のパワーがあります。今こそ、 この学会が社会に役立つ時です。皆様からのご協力を得ながら、 良いチームヮークで頑張りたいと思っております。


森八郎博士とご一緒に

40年ほど前、私は森八郎博士に同行して、博物館内の害虫やカビの検査と、その燻蒸に携わっておりました。まず収蔵庫の床を帯ではいて、集めた塵やゴミを、東京国立文化財研究所内にある森先生の生物研究室に持ち帰り、白い紙の上にそれらを広げて、メッシュの大きさの異なった篩(ふるい)でふるって、仕分けをしました。そしてその中から昆虫の糞や脚や触覚などを選び出して、顕微鏡で観察して同定をするのです。その同定は、上野の図書館へ行って、大きな昆虫図鑑で検索するので、私は研究室と図書館との往復を繰り返していました。そしてその昆虫のパーツをガラスの試験管に入れ、昆虫名・学名・捕獲場所・日時・捕獲者名を記したラベルを貼るのです。こういったように掃除から始まり、昆虫の学名調べまでの一環の作業が、森八郎先生からの私への勉強の贈り物でありました。そして今でも私の大切な財産になっています。

当時、一般家庭の床下でのシロアリ駆除の際に、住民たちに頭痛が起きたり、呼吸障害が起きたりした症状が出た事から、森先生は、薬剤による悪影響はあってはならないと、頭を痛めておられました。その頃の森八郎研究室には、燻蒸作業に携わっている大手の企業の方々や、殺虫剤メーカの方々の来訪が多くありました。
そこで燻蒸業者と殺虫剤メーカと研究者とが一緒になって、シロアリ研究会を創設されたのでした。これが今のこの都市有害生物学会の始まりです。そして森先生と日本の燻蒸業者と殺虫剤メーカは、人々への健康をまず第一にと、住宅においての塩素系の強い殺虫剤の使用を禁止したのです。これは世界においても、また今日でも、多いに誇れる人々への安全性を重視した画期的な勇断でありました。そして研究者と企業が合同で、薬害のない殺虫剤の開発に努められたのです。


我が国が世界に誇りとする文化遺産の伝承

我が国は、害虫やカビの繁茂に適している気候にも関わらず、世界に類を見ないほど文化財としての木造建造物が保存されて、活用もされている国です。今、有害生物対策は、地球環境と人々への健康を考えて、IPMの理念が世界的に浸透しています。IPMとは、被害が起きる前の予防に重点を置く対策法です。これは日本人が、先人たちの知恵を引き継ぎながら、長い年月にわたって文化財を守り、今に伝えている同じ仕法なのです。この事を、私たちは、次世代に繋げて行かなければなりません。このような中、現状は、地球温暖化が進行しつつあり、急激な気象の変化や、大きな自然災害も世界の各地で多発しています。これからは、最近のIT技術も導入して気象の変化、そして生物の変化をも事前に予測しながら、森八郎先生が創設された時の、人々への安全性と多様生物とが共存する都市づくりの初心を継続していく事がこの学会の使命でもあると思います。

都市とは、人間だけが住んでいる場所ではなく、そこは多種多用な生物の住む場所でもあります。それをアーバンと言います。そしてその都市で、人間に対して悪さを引き起こす生物をペストと言います。都市有害生物管理学会、英語名はThe Society of Urban Pest Management,Japanは、なお一層のこと、都市における有害生物による被害防除について真剣に取り組み、且つ、普段はアーバンペスト学会と簡略して呼ぶ事にして、会員ではない方々にも親しまれながら、幅広いニーズに対応して、皆様の役に立つ学会を目指して行きたいと思っております。

今後とも皆様のご指導・ご協力の程を何卒よろしくお願い申し上げます。

2014年11月20日